present | ナノ


▼ 

俺は盛大に動揺した。

「えっ、ええ〜っ!?お、俺そんなことできませんよ……!」

香奈さんとあんなことやそんなこと――そりゃしたいけど、今それをしてしまったら本物の犯罪者になってしまう。

それに、こういうものには順番っていうのが……


「ジローさん、意外と純情さんなんですね。でもしかたないです、そこがジローさんのいいとこで、香奈さんを振り向かせる要素になるかもしれませんからね。わかりました、だったらできることはひとつです」

宮田くんは優しい笑顔で言った。

「なんですか…?」

「とにかく気持ちを素直に伝えることですよ。かっこわるい気持ちだって、変態扱いされるような気持ちだって、全部をありのままに。――そうしたら、例え叶わなくたって、ジローさんの気持ちは絶対に、香奈さんの心まで届くんですから」

「宮田くん…」

「それから、会いたくなったらすぐに会いに行く。合鍵……は無理でも、会いたい気持ちにだけは嘘ついちゃいけないですよ。一番シンプルで、重要な気持ちなんですから。――あ、ひとつなんて言っといて、ふたつも挙げちゃいましたね」

宮田くんは笑って頭をかいた。


「……いや、ありがとうございます。すごく力をもらえた気がする」

そうか、香奈さんにいいとこ見せたくて頑張ろうとしたりするけど、かっこわるい気持ちだって、正真正銘俺のものなんだ。

それも含めて俺ぜんぶで、香奈さんにぶつからなきゃいけないんだ。


きっと宮田くんは、宮田くんのぜんぶで――本当にぜんぶで青山さんにぶつかっていったんだろう。

だから、青山さんも、宮田くんの気持ちを受け止めた。

『変態』とか『ストーカー』とか『気持ち悪い』とか言っていたって、そんなとこも含めて、青山さんは宮田さんを好きなんだ。きっと。


俺も、香奈さんとそんな風になれたらいいな。


「宮田くん、今日仕事帰りに香奈さんとお茶するんですけど、一緒に行きませんか?」

なんとなく、宮田くんに『これが俺の好きな人なんだ』って、見てほしくて、俺は無意識に彼を誘っていた。

「お二人がいいならぜひ!あ、この近くにおすすめの喫茶店があるんです。場所決まってなければそこに行きませんか?」


宮田くんは、ニコニコ顔で承諾してくれた。



****





prev / next
(6/10)

[ bookmark/back/top ]




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -