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「綺麗な人ですねえ」

俺がそう言うと、宮田さんはますます目を輝かせた。瞳に無数の星が見える。

「でしょうっっ!?綺麗ですよねえ!俺の恋人なんです!あ、他にも写真たくさんありますよ。見ます?」

相変わらずいい笑顔だが、さっきまでの『爽やか』という印象とは微妙に違う、ものすごいハイテンションな様子でかばんを探り始める。


ばさっ、と膨大な枚数の写真が机に広げられた。

「青山さんって言って、美人獣医さんなんですよー!しかも院長!ちなみにペットの名前はチャッピーです。ほら、ここに写ってる子。このときの青山さんすごくいい顔してますよねえ!ああっ、これなんかほんと綺麗でしょう!?背中から腰のラインがすっごくセクシーで…」

写真を次々に見せながら、宮田さんは息継ぎもせず『青山さん』について語り続ける。


確かに『青山さん』は綺麗で、それでいて眼鏡に白衣の獣医姿はキリリとしていて、魅力的だ。


だが――

「あの、なんでこれ全部カメラ目線じゃないんですか?なんていうか…物陰から撮った、みたいな……。ええと、恋人、なんですよね?この人、宮田さんの」

俺は思わず、疑問を口にする。

初対面の人相手に失礼かと思ったけれど、なんとなく聞いてしまった。


すると、宮田さんは少し悲しそうに眉を下げた。

「そうなんです……青山さんってば、俺が写真撮ろうとするとすっごく嫌がるんです。でもやっぱり好きな人の写真は持っていたいじゃないですか?だから物陰から撮ったりするんですけど、そしたら青山さん、俺を『ストーカー』とか『変態』とか言って……」

しょんぼりと俯く姿はまるで捨て犬。


そんな宮田さんを見て、俺は、ものすごい既視感を覚えた。


好きな人を一途に想う青年。

愛ゆえのまっすぐな行動。


それを『ストーカー』『変態』呼ばわりする、想い人。



これは………まさに………

『香奈さん!今日の髪型可愛いですね!写真撮らせてください!こっち向いてー!』

『嫌よ気持ち悪い』

『ええーっ!じゃあ香奈さんが気付かないうちに撮りますねっ』

『そんなことしたら通報するから。このストーカー!』

『酷いっ!愛じゃないですか愛!』

『黙れ。ド変態』


完全に、俺と香奈さん………!




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