present | ナノ


▼ 

ちょうど、鏡の中に立っているかのように、普段通りの水原さんが、そこにいた。


―――いや、普段通りなんかじゃない。


普段とは決定的に違っていた。


水原さんは、笑っていたのだ。

僕の目を見て。嬉しそうに。



「こ、こんな……」

僕がいくら動揺しても、水原さんはにこにこと笑っている。


「馬鹿な……」

僕が鼻先がつきそうなほど鏡に接近しても、水原さんは逃げない。


「………つまり、これは、」


僕はふたつの事実に驚愕した。


魔法の鏡は、本物だったこと。

そして、僕が見たくて見たくてしかたがなかった一番の『望み』は―――水原さんの笑顔だったということ。



「……………」


僕は、言葉もなく、鏡の中で笑う水原さんを、ひたすらに見つめ続けた。



****



prev / next
(10/12)

[ bookmark/back/top ]




「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -