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あえて細い道を選び、進んでいると、道端に小さな祠があった。

覗き込むと、小さな狐の像があり、油揚げと飴が供えられている。


「お稲荷さん、か」

口に出すとその響きに心が和んだ。


僕は祠の前にしゃがみ込み、目を閉じて手を合わせた。

(…幸せに、なれますように)

漠然とした、しかしこの場には似合わないほど切実な願いを、僕はお稲荷さんに告げる。


供えるものが思いつかなかったから、かばんに詰めてきたおつまみ各種のうち一袋を、とりあえず置いておく。

狐ってさきいか食べるんだろうか。


まあいいか、と立ち上がり、僕は再び歩きだした。


さらに細い道を選んで最終的には神社にでも行こうと思っていたはずなのに――なぜか足が勝手に大通りに向かう。

(あれ?おかしいな。僕は一体何を…?)

不思議に思いながらも、足を止めることはなく、目的があるかのような歩調で、僕は商店街を歩いていた。


何かにひっぱられるように、店と店の隙間にある抜け道を進み、僕はある店の前で立ち止まった。


『桐野骨董品店』

店にはぼろぼろの看板がかかっている。


なぜ僕はここに来てしまったのだろう。
首を傾げる。

しかし、なんとなく入ってみようという気になった。

今まで骨董屋に入ったことなどなかったけれど、せっかくの旅だ。何事も経験だ。


扉を開くと、客は誰もおらず、本を読んでいた店主がゆっくりと顔を上げた。

「いらっしゃい」

穏やかな表情が魅力的な、老紳士だ。


「あ…、なんとなく、入ってみただけなんですが…」

「構いませんよ。ごゆっくりご覧になってください」

店主は柔和な表情でそう言うと、再び本に視線を落とした。



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