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この本を読んで、世界は変わらなかった。
だけど、この本を読んで、死ぬことを先延ばしにしていて、よかったと思う。
今は、死にたくないのだから。
今思えば、僕は四つ葉堂書店にリクエストをした時、本当は誰かに「君は死んではいけない」と、言ってほしかったのかもしれない。
そしてあれが「死にたくない」という感情だったのかもしれないと、今ならわかるような気がする。
それを僕は、彼女に出会って知った。
僕の世界を変えた、彼女に。
明日もきっと、あの古書店に彼女はいない。無愛想な店主が座っているのだろう。
そして、もしも彼女がいたところで、僕は本を差し出して、代金を払うことしかできないのかもしれない。
だけどもし、明日あの店に彼女がいて、僕の気が大きくなってしまうくらいに天気がよかったなら、彼女に話しかけてみようか。
思うだけなら、ただなのだ。
そういう思いが、明日を待ち遠しくさせるのだ。
これが生きていることなんだ、と、死にたくなりたかったあの頃の僕に言ってやったなら、きっと首を傾げるのだろう。
special thanks!
ナマケMONOさん
ナマケMONOさん
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(6/6)