present | ナノ


▼ 

この本を読んで、世界は変わらなかった。


だけど、この本を読んで、死ぬことを先延ばしにしていて、よかったと思う。


今は、死にたくないのだから。



今思えば、僕は四つ葉堂書店にリクエストをした時、本当は誰かに「君は死んではいけない」と、言ってほしかったのかもしれない。

そしてあれが「死にたくない」という感情だったのかもしれないと、今ならわかるような気がする。



それを僕は、彼女に出会って知った。

僕の世界を変えた、彼女に。




明日もきっと、あの古書店に彼女はいない。無愛想な店主が座っているのだろう。


そして、もしも彼女がいたところで、僕は本を差し出して、代金を払うことしかできないのかもしれない。



だけどもし、明日あの店に彼女がいて、僕の気が大きくなってしまうくらいに天気がよかったなら、彼女に話しかけてみようか。


思うだけなら、ただなのだ。

そういう思いが、明日を待ち遠しくさせるのだ。



これが生きていることなんだ、と、死にたくなりたかったあの頃の僕に言ってやったなら、きっと首を傾げるのだろう。



special thanks!
ナマケMONOさん





prev / next
(6/6)

[ bookmark/back/top ]




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -