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おじさんは、顎に手を当て、納得したように頷いている。
「なるほど……貴女のものは全部、この方のものというわけですね。しかたない、相手が悪かったと諦めましょう」
彼の言葉をおじさんが解説してくれたような形になった。
諦めてくれたのはいいけれど――彼のやきもちで『主食』を取られてしまったおじさんに、私はすごく申し訳ない気分になる。
「……あ、あの……ご、めんなさい…お腹いっぱいに、してあげられなくて………ひゃっ!」
私がなんとかおじさんに謝ろうとすると、彼が首筋にキスを落とした。
身をすくめる私に、囁く。
「こんな時に他の男に話しかけるな」
「他の…って……そんなんじゃ……」
もう、ひじ掛けに視線を向けることさえ許されなくなった私の耳に、おじさんの声が聞こえてきた。
「私ほどの美食家がお墨付きを与えた、貴女の涙を独占できるとは。この方は、幸せ者ですね」
半分呆れたような、もう半分はなんとなく嬉しそうな、響きだった。
おじさんいわく『幸せ者』の彼は、私を見下ろして、少し苛立たしげに言った。
「美食家が帰ったら教えろ。他の男に見せるわけにはいかない」
「な、何を……」
「言っていいのか」
「だ、だめっ!」
私は思わず彼の胸を押し返す。
彼は小さく声を上げて笑った。
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