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噛みつかれたことは、もちろんとんでもなく恥ずかしい。


だけど問題は、その場にマリカさんと兵士が二人、いたことだった。


「絶対からかわれる…!絶対噂になっちゃう!」

三人の反応を見る余裕さえなかったけど、今頃間違いなく、三人ともニヤニヤしている。


そりゃあ彼は、周りの目なんて気にしないんだろうけど……。

その証拠に、いくつも前科がある。

例えば晩餐会で、皆の前で……キスされたり……


そこまで思い出すと、それから喧嘩して、仲直りして……その後のことまで一緒に思い出してしまう。


また一段と体温が上昇して、私は自分の膝に顔を埋めた。

「………カズマ様は、ずるい」


自分ばっかり余裕そうな顔をして、私をからかって……私がどんなに、どきどきしてるかも知らずに。

――違う。きっと、知ってて、わざと。


やっぱり、ずるいと思った。


いたたまれない気分で縮こまっていると、ガチャリ、とドアが開く音がした。


まっかなままの顔を上げると、彼が部屋へ入ってきたところだった。


一人で恥ずかしくなっていた私は、それを彼に見られたことでますます恥ずかしくなる。


「か…カズマ様……」


本人を前にして記憶は蘇るし……私は視界がぼやけてくるのを感じた。

恥ずかしすぎるといつも泣きそうになってしまうのは、私の悪いくせだった。



彼は一瞬眉をひそめると、私の隣に腰掛けた。

「……なんで泣きそうなんだ、お前は」


呆れたようにそうつぶやいたかと思うと、彼はいきなり私の目元に唇を寄せた。

溢れかけていた涙が、奪い取られる。


「…ひゃあっ!」

びくりとして思わずぎゅっと目を閉じると、もう片方の目元に残る涙も、彼の指に拭い取られてしまった。


私はもう、それだけでくらくらしてしまいそうになる。

どう反応していいかわからなくて、すがるように彼の目を見ると、彼は少し笑って、私の髪に手を伸ばした。




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