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「その世界にある、大事なものを思い浮かべろ。できるだけ小さくて、あまり動かないものがいい。そこを『帰る目印』にすると、道が繋がる……とか言っていた。何かしらの方法でここへ来れたのなら、それで帰れるだろう」
垂氷は「あまり騒ぐなよ」と言い残し、さっさとその場を立ち去った。
「……大事な、小さいもの……?」
「木の実とかでいいんじゃないのか」
「馬鹿ね、そんなのどこにもあるじゃない。あそこにしかないものを思い浮かべなきゃ帰れないから、困ってるの」
フクロウは、考え込むように、目を閉じた。
――その瞬間。
カッ、と白い光が閃き、どこからともなく突風が吹いた。
「うわっ!」
日向はその勢いで尻餅をつく。
フクロウがなんとか片手で風を防いでいると、光の向こうから人影がぼんやりと現れた。
「あっ、いた!」
何もないところから顔と右半身だけをのぞかせ、笑顔でそう言ったのは、茶髪の少年だった。
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