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「ゲッ!ネコ野郎!なんで今日に限ってこんな近くにいんだよ……しょっちゅう行方くらましてるくせに」
「案内しねえ」と言った瞬間に現れた垂氷に、日向は苦い顔をする。
垂氷はうるさそうにそんな日向を見下ろしていた。
「……あなたが垂氷?」
フクロウが垂氷に話しかける。
自分に対する尊大な態度とは違い幾分丁寧なその口調に、日向はムッとする。
「そうだが、何か用か」
垂氷はフクロウを見下ろす。
無表情ながら、少し興味深そうな視線だ。彼女が自分たちと『違う』存在だと感じ取っているようだ。
日向とフクロウは、これまでの経緯を垂氷に説明した。
「つーわけで、このフクロウを元の世界に帰す方法を教えろ!」
日向が垂氷を指差すと、垂氷は記憶を辿るような表情になった。
「あの男が異世界に行くところは何度か見たが……帰る方法か」
「うわ、まじかよ!ほんとにあのおっさん異世界行けんのか…」
少し興奮気味に身を乗り出す日向に背を向け、垂氷はフクロウの方を向いた。
「そういえば……あの男が、聞いてもいないのにやり方をぺらぺらと喋っていた気がするな」
「本当!?」
「確か……戻りたい世界に、焦点を合わすと言っていた」
「焦点…?」
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