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「かあさまー!」
一方のカントは、満面の笑みで母親に抱きついていた。
幼い身でありながら、怖い目に遭ったというのに全く動じていないように見えるくらいだ。
「よく頑張ったな」
フォレガータが一人娘の頭を優しく撫でる。
「りんちゃんといろんなお話してたの!だからへいきだったの!」
それを聞いたカズマは、複雑そうな表情になる。
フォレガータは、愉快そうに笑った。
「ほら、女というのは意外と強かなものだ」
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「でもそれって、助けてくれるって信じてたからですよ」
帰り道、馬に二人乗りをしながら、リンがカズマに言った。
「カズマ様がいつも、私の心を守ってくれてるから。だからきっと大丈夫って、平気でいられたんですよ」
もちろんカズマ様本人が来るなんて思ってなかったですけど、と付け加えて。
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賊たちはすぐにノグ国に送り返され、フォレガータ一行は残りの滞在期間を大いに楽しんだ。
こっそり下町に降りて珍しい食べ物を頬張ったり(カズマはおとなしく王宮で留守番をしていた)、女性三人は一緒に風呂にも入った。エムシはカザミに稽古をつけてもらい、カズマは興味深げな様子でキリに魔術のことを尋ねてきた。
フォレガータとカズマが二度目の会談を終えると、中庭で子供たち三人とリンが、犬のユキを枕にして昼寝をしており、カズマはため息をついた。
キリは、例の三人の兵士たちに『あのすごいのもう一回やってください!』と何度もせがまれ、半ば辟易していた。最終的に兵士たちはカザミに説教されることになった。
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