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ほぼ同時に、三人の賊は地面に倒れた。

ほとんど一瞬の出来事である。


念のため壁を作ったままにしておいたキリは、すぐにそれを解除することになり、傍らのエムシは、何が起こったのかわからないとでも言うように目をぱちくりさせた。

雑魚たちを縛っている最中だった兵士たちは、拍手喝采。



「素手で直接妻に触れていたら殺しているところだが――手袋をしていたことだけは褒めてやる」

カズマが男を踏み付けながら言い捨てるが、当人はとっくに気絶しており、その言葉を聞くことはできなかった。

いずれにせよ、男が命拾いをしたのは確かである。



手首を拘束していた縄を解き、カズマは自由になった妻を抱きしめた。


が。

「カズマ様っ!王宮にいないとだめじゃないですかっ!」

どん、と胸を押され、すごい剣幕で叱り付けられた。


「な、何……?」

「陛下がいないのに王宮を空けるなんてだめです!何かあってカズマ様が責任を取るようなことになったら、私、その方が嫌です!私のためにそんな簡単に、王子であることを捨てたりしないでください!」

「捨てるつもりは、」

「ないならなおさらだめです!カズマ様が王子じゃなくなったって私はカズマ様の妻です。だけど、だからこそ、カズマ様が王子じゃなくなったらだめなんですっ!」


「……悪かった」

尻餅をついたまま、カズマはかろうじて言葉を搾り出した。


兵士たちも主と同じく虚をつかれたように目をまるくしている。

カザミはくすくすと笑っていた。


一通り説教をした後、リンは小さく息を吐いてから、おずおずとカズマの両手を握った。

「……もう、捕まったりしませんから。たくさん心配かけてごめんなさい」


そして、とても嬉しそうに、笑う。


「助けてくれて、ありがとうございます」


今度こそ、カズマは強く、妻の身体を抱きしめた。

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