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「殿下申し訳ございません。お二人から目を離してしまった私の責任です」

「いや、中庭には何人も兵士がいた。平時ならば万全の警備体制だろう。こういう事態に思い至らなかった俺が甘かった」


カザミ将軍と二言三言交わした後、カズマはキリを振り返った。


「キルッシュトルテニオ皇子、すぐに賊を追う。道案内を頼めるか」


「お待ちください殿下!陛下不在の今、殿下が王宮を空けられては……」

うろたえる兵士を、カズマは睨みつける。

「すぐ済む」


全然冷静じゃなかった――キリは呆れ気味に先程の印象を修正する。


「私が説得致しましょう」

キリの傍らに立つカザミが一歩前に出る。

カザミとしては、王族の誰も連れて行きたくはなかったが、事情が事情だけに魔法を知るノグ国側の協力は不可欠だった。

しかし、カズマは違う。兵士の言うとおり、国王不在の王宮を空けていい立場ではない。


「おそれながら殿下、」

「待ってください、カザミ将軍」

カズマに声を掛けようとしたカザミを、キリは遮った。


「いつもならこんなことは駄目なんでしょうけど、今日は俺がいますから」

「キルッシュトルテニオ皇子……?」

疑問符を浮かべる将軍は、主に倣って律儀にキリの名を縮めず呼ぶ。

「ここに結果を張って行きます。悪意のある者が近寄れないように。それから、魔術でカズマ王子の影武者を」

「そんなことが、可能ですか」

カザミは目を見開いた。

「今日は重要な来客はありませんよね?俺たちが来ているんですから。あまりにも長時間、混み合った話し合いでもするなら別ですけど、ちょっとやそっとじゃ見破られないはずです」

「キリの魔術は、信用していいぞ」

フォレガータがぽんとキリの肩に手を置いて言う。


そして、カズマの方を振り返った。

「カズマ王子、今回限りの特別措置だ。責任は私が負う。――ただし、いずれ国を率いていくその身分と立場を、これからは絶対に蔑ろにしてはいけない」

「――――ありがとうございます、フォレガータ女王陛下」


しばらく立ち尽くしていたカズマは、深々と頭を下げた。


「もっとも、王族としての自覚をかけらも持たない人間が私の身近にいるのだから、他人のことは言えないのだがな」



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