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「カザミ将軍は大人気だな」
王宮のバルコニーでは、フォレガータとカズマが並んで中庭を見下ろしていた。
笑顔のフォレガータとは対象的に、カズマはどこか憮然とした表情である。
仲が良いのはいいことだ。
妻が楽しそうなのもいいこと。
客人が喜んでいるのももちろんいいことだ。
だが。
自らの狭量をわざわざ口に出すのも憚られ、カズマは無言で妻の姿を眺めていた。
「ああしているとまるで仲の良い家族のようだな」
「…………」
「さしずめカザミ将軍が父親でリン王女が母親と、」
「夫婦になるには歳が離れすぎているかと」
フォレガータは声をあげて笑った。
「心が狭いな、カズマ王子は」
厭味のない言い方だったが、だからこそ、あっさりと内心が露呈してしまっていたことにばつの悪さを覚えるカズマである。
「父の言うように頭がかたいだけです」
「それはそうかもしれないが。まあ、そういうことにしておこうか」
ここに父親がいなくてよかった、とカズマは胸を撫で下ろした。
「さて、子供たちを眺めてばかりいてはどんどん時間が過ぎてしまう。そろそろ本題に入ろうか」
「そうですね」
国をまとめる立場にある女王と王子は、背筋を伸ばし、会談の場へと向かった。
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魔術を持つ国と、持たざる国。
距離以上に、その違いは両者を隔てるものであったが、だからこそ今後の協力関係に希望が持てる――そんな話し合いがなされた。
魔術という優位な武器を手にしているはずのノグ国――フォレガータが、この国と対等であるとの立場を崩さなかったおかげであろう、とカズマは考える。
今後は魔術師の派遣なども視野に入れつつ、まずは交易の面で両国の繋がりを強化していくこととなった。
主要な話し合いが済んだ後の『雑談』も、もっぱら政治や軍事についてで、そういう意味でこの二人は非常に気が合うと言えた。
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