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「四人でなかよしー!」
カントが弾んだ声をあげる。
「俺は仲間はずれかー」
特に深い意味もなく呟いてみたキリだが、
「キリ皇子も、繋ぎますか?」
ニコニコ顔のリンに、カントと同じように左手を差し出され、思わず苦笑した。
「いえ、遠慮しておきます」
あの王子様、怒ると怖そうだし、ていうか心狭そうだし――キリは心の中でそう付け加えたのだった。
「こうしていると、幼い頃の殿下を思い出しますね」
中庭をゆっくりと散歩しながら、カザミがぽつりと言った。
殿下、と聞いてリンの表情がさらに明るくなる。
わかりやすい人だな、と横目に見ながら、キリはカザミの言葉を少しだけ意外に思い、尋ねた。
「肩車とか、したんですか?」
「僭越ながら」
全く想像がつかない。
そもそも幼いカズマ、というのがキリにはイメージできなかった。
「カズマ様はカザミ将軍にとっても懐いてたって、陛下が言ってました」
リンが何故か嬉しそうに言う。
「そういえば、お手紙でおっしゃってましたね。カズマ王子は国王陛下とカザミ将軍にだけは頭が上がらないって」
手紙の到着に毎回狂喜するカントはもちろんだが、エムシもリンからの手紙は何度も繰り返し読んでいるのだった。
特に、カザミの話題があるときは。
「あっ、エムシ皇子、私がそんなこと言ったって、カズマ様には言わないでくださいね!」
「おやおや」
慌てた様子のリンを見て、カザミが笑う。
平和だなあ、とキリがぼんやり考えていると。
「ねえねえりんちゃん、かずまさまが子どもだったこと、あるの?」
ずっと黙っていたカントの言葉に、全員が吹き出した。
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