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「こうた、きす、して……?」
いつもなら、飛び上がって喜んでいただろう。
恥ずかしがり屋な未来が、自分から『キスして』なんて。
理性がぶち切れて思いきり長いキスをしていたかもしれないし、わざと意地悪に『したいなら未来の方からして?』なんて言っていたかもしれない。
だけど。
だけどこれは。
これは、犯罪、ではないだろうか。
「いや、あのね?未来……」
「して、くれないの」
「いやいやいやいや!」
ずいっとこちらに迫ってくる俺の恋人は――どう見ても、幼女だった。
「一応聞いていいかな。今いくつ?」
「むっつ」
「犯罪だ!!!」
未来から逃げるように後ずさると、彼女は俺の脚にしがみつき、泣きそうな顔でこちらを見上げた。
「すきならきす、して」
「……いやあのね、未来さん、落ち着いて?」
「わたしはすごく、おちついてるわ」
「そうだね、俺よりよっぽど落ち着いてるね、うん……」
「こうた、わたしのこと、きらい?」
「す、好きだよ?」
「だったら、して」
俺は一体、何を試されているんだろうか。
ごくり、と唾を飲み込む。
問題は、幼女になったところで未来は未来で、愛しいことに変わりはなくて――つまりは未来のお願いを聞いてしまいそう、というかむしろキスしたくなってしまいそうだ、ということだった。
「俺はロリコンだったのか!!??」
「なにをいってるの?こうた」
「いやダメだダメ!ダメだよ未来!俺を新しい世界に引き込まないでくれ!我慢しよう、我慢!ねっ!?」
俺はいつになく興奮気味に未来を宥めた。(興奮気味に宥める、というのは文脈がおかしい気がするけれど、事実なんだからしかたがない)
未来の前にしゃがみ込み、目線の高さを合わせる。
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