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「この子は、素直なだけだ。まっすぐなだけだ。決めつけたりなんかしてない――この子が自分で言ってたとおり、伝えてるだけだ」


『アサギリ、敬語崩れてるぞ!』という兵士の警告は、耳をすりぬけていった。


「それはきっと、本当はすごく勇気のいることで、傷つく覚悟もしなきゃいけないはずで……だけど、それがこの子の仕事で、もしかしたら誇り、なのかもしれない。信じる信じないは自由だけど、それを禁じる権利なんて――誰にもない!」



広間は、しんと静まり返った。



――ぎゅっ、と。

袖を掴まれたのがわかった。

その指先は、小刻みに震えている。


「……ありがと」


頼りない声を発した少女に、思わず笑みが零れた。

「俺が思ったこと、勝手に言っただけだから」



それでも、この少女の命と、ほんの少しでも心を救えたのだとしたら、それはすごく、嬉しいことに違いなかった。



――のに、

「なるほどな、アサギリ。貴様の言いたいことはよくわかった。二人まとめて、斬る」

「え、ええええええええっ!!??」


今のこの流れで、そう来るんですか、殿下!?


「ごたくを並べたところで妻が俺を振るなどという呪わしい言葉が消えるわけじゃない。くだらん占いの結果ごと、葬り去ってやる」


殿下が剣を振り上げる、乾いた音が、耳を掠める。


「うわああああああっ!ちょっ、待っ……本編ではここまで物分かり悪い人じゃなかっ……本編って何だよ!いやとにかくまずい、斬られる、死ぬ!うわ、うわあああああああああっ!!!!」



鋭い剣が俺の身体を切り裂く


直前に、目が覚めた。



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