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「夢か……」
身体を起こすと、当然ながらそこは俺の住むアパートだった。
目覚ましのアラームが、けたたましく鳴っている。
「くのいち未来ちゃん……」
寝ぼけた頭で呟く。
凛々しくて、綺麗だったなあ。
髪、いいにおいしたし。
未来のあの反応、夢の中の俺たちももしかして恋人同士だったのかな。
『例のもの』とかのせいで敵同士に?
今にも泣きそうな顔してた。あの後、未来は泣いたんだろうか。
「――いや、夢だし!」
やっとまともに覚醒して、俺は何度も頭を振った。夢の名残を振り払うように。
「ていうか喧嘩中だし。まだ怒ってるし。会いたいわけじゃないし」
夢に未来が出てきたのは、彼女が居ないことに慣れないせい。それだけだろう。
未来はいつも静かだけど、それでも、未来のいないこの部屋は、静かすぎる気がした。
「バイト行こ……」
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