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その言葉に、日向はぴくりとする。
「『世界』?お前、じゃあ……異世界から来たのか?」
精霊界から召喚された日向は、『世界』がひとつではないと本能で知っている。
フクロウはちらりと日向の顔を見た後、顎に手を当てて考え込んだ。
「まあ、はっきりとはわからないけれど。……なぜかフクロウになれないから、空から確かめようがないし」
ふうん、と小さく声を漏らし、日向はまじまじとフクロウを眺めた。
「その妙な服とかな、着てる奴なんてこっちの世界にはいねえぞ。…しっかしどうやって迷い込んじまったんだよお前」
「わかんないわよ。ただ秋太に着いて歩いてたら急に、」
顔をしかめたフクロウの言葉を、日向が突如遮った。
「シュウタ!?誰だそれ!お前の好きな奴か!」
ぐいっと顔を近づけて、ニタッと笑う。妙に楽しそうだ。
「は!?違うわよ!秋太はただの化け狐の息子。なんでそうなるの」
フクロウは、思いきり顔を歪める。
しかし日向は得意げに声を張り上げた。
「俺はいつもナツに着いて歩いてるからだ!」
無意味にどや顔で腰に手をあてている。
「ナツ?」
「俺の好きな奴だ!」
「あ、そう」
「ナツはな、かわいくて元気で笑うとかわいくて騒々しいけどかわいくてな!」
「聞いてないわよ」
「優しいしかわいくてな!だからいっつも早瀬が…………あいつの話はいいんだよ!!!!」
「聞いてないから」
「くそ……早瀬、あいつナツを変な目で眺め回しやがってよ……変態が……」
一人でぶつぶつ呟き始めた日向を見て、フクロウはため息をついた。
「この馬鹿じゃ頼りにならないわね。……まあ今日一日ぐらいだったらこっちに避難しててもいいけど」
「避難?」
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