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「お前……鳥のにおいがする」
言いながら少女の足元に接近する。
「お前、『何』だ?」
すると少女は、少し目を見開いた後、首を傾げて言った。
「よくわかったわね。犬だから?」
「精霊だからだ」
日向はそう答えると、一瞬で人間の姿をとった。
黒い犬が、黒髪の浅黒い青年に姿を変える。
「『精霊』…聞き慣れない言葉ね。私と同じようなモノのはずなのに。 やっぱりここは、『違う』場所なのかしら」
少女はひとり考え込む様子を見せた。
「違うってなんだ?名を名乗れコラ」
おいてきぼりにされた気分の日向は、痺れをきらして軽く凄んだ。
「私はフクロウ。よくわかんないけど『狭間』からここに迷い込んでしまったらしいわ」
フクロウ、と名乗った少女は、日向の視線を意にも介さず平然と答える。
「はざま?なんだそりゃ。お前ここの奴じゃねえのか?」
「そもそもここはどこなの」
「どこって…王都だよ王都!」
「……なんか馬鹿っぽい」
見上げられているのに見下ろされているような視線を向けられ、日向は思わずこぶしを握った。
「んだと!?賢くて強い日向様に向かって『馬鹿』だと!?馬鹿って言う奴が馬鹿なんだぞ!ばーか!」
舌を出して指をさす日向を、フクロウは完全に無視して呟いた。
「やっぱりここは『違う世界』みたいね」
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