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ジュースの中にわずかに混入された薬にわずかに配合されていたアルコールのせいだったようです。
少なすぎてカズマ殿下はお気付きにならなかったんですわね。
「こいつに酒を飲ませたら大変なことになるんだ。二度とするなよ」
「ツバキ、取り返しのつかないことになってたかもしれないんだよ?反省しなさい」
お二人から冷たい視線を向けられたツバキさんは、うなだれました。
「事故なのに……二人ともひどいっす」
「やはり斬るか」
「カズマさん、私が後でしつけておくから」
ぞくりと背筋に悪寒を走らせた様子のツバキさんを、リンさまが怖ず怖ずと見上げました。
「つばきさん、わたしはぜんぜんへいきでしたから、あの、きにしないでください」
「リン様……!ううっ……やっぱ天使っす!ロリは天使!」
「あの、じつはすこし、たすかりましたし」
「???よくわかんないっすけど、よかったっす!」
「何ひとつよくない。さっさと解毒剤を飲ませろ」
ロリ化のせいでお預けを食らったカズマ殿下は、不機嫌そうに言い放ちました。
渋々ツバキさんが解毒剤を渡し、しばらくして、元のサイズのリンさまが、殿下の上着を羽織って私たちの元へ戻って来ました。
「……はあ、パーティーする気が失せるくらい疲れたよ」
ソファに身体を沈めたカイン伯爵は、目元を押さえて息を吐きました。
「まだ何ひとつ始まってませんのにね」
私は思わず、苦笑してしまったのでした。
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その後、パーティーでも様々なドタバタ劇があったことはまた別の話。
そして、夫婦に与えられた部屋から聞こえたリンさまの絶叫に私が駆け付けると、リンさまに襲い掛かろうとしているかっこうの幼い少年が怒りに身体を震わせていたことも、また別の話ですわ。
「そういえば、カズマ様も飲んでましたよね、あのジュース……」
「効き始めに時間差があるのは何故だ」
「合う合わないがあるんすよ、人によって!」
「何でもいい、斬る」
「ショタが『斬る』!!!ハアハア、」
「ツバキ、よだれ拭きなさい」
「というかいつの間にカイン伯爵もショタに……?」
end
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