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「しつこいっす殿下!ひとまず避難………へぶっ!!!!!」
ツバキさんが扉の前に来た瞬間、パタンと扉が閉められ、ツバキさんが扉に激突しました。
「い、いたたたた……」
振り返ったツバキさんを扉に縫い止めたのは――氷のような笑顔を浮かべたカイン伯爵の、両腕。
「ツバキ?いい加減に、しなさいね?」
その迫力と近すぎる距離に、ツバキさんの表情が変わります。
「う、あの……でも伯爵」
「でも、じゃないよ。謝りなさい。それから解毒剤をリンさんに渡す」
「ロ、ロリ……」
「謝りなさい」
「う、うう〜!近いっす伯爵!離れてほしいっす!」
「話を逸らさない。謝るまでどかないよ」
「ちょ、なななんで眼鏡取るんすか!」
「邪魔だからだよ」
「ちか、近いっす!!!これ以上近付かないでほしいっす!!!」
「さっさと謝らないとまた眼鏡割るよ」
「なんすかその脅し!!!」
ツバキさんの眼鏡を胸ポケットにしまったカイン伯爵は、片手は扉についたまま、もう片方の手でツバキさんの顎を持ち上げます。
「ツバキ?」
「……っ、わ、わかったっす!!!わかったから、謝るから離れ……あああもう!悪かったっす!カズマ殿下、悪かったっすから!!!」
顔を真っ赤にしたツバキさんは、じたばたと抵抗しながら叫びました。
「だったらいちゃついてないでさっさと解毒剤を持って来い」
カズマ殿下が剣をしまいながら命じます。
「よかったね、ツバキ。あとでしっかり反省してもらうけど、とにかく解毒剤持って来なさい」
カイン伯爵は、ツバキさんの眼鏡を戻すと、扉を開きました。
「わかったっすよ!ああ…ロリ……」
ツバキさんの背中を見送りながら、カイン伯爵がため息をつきます。
「すまなかったね、本当に。お詫びになるかわからないけれど、パーティーの後うちに泊まって行くといい。君たちがよければだけど」
「それは助かる。メイドを大人しくさせておいてくれるなら、の話だが」
「夜通し説教しておくよ」
以前のように、お二人の顔には疲労の色が。
すると、ツバキさんが小瓶を持って戻って来ました。
「リンさん、あの薬、ちょっとアルコール入ってたんすけど大丈夫でした?」
「えっ?あっ」
「少量で長く効くタイプの薬を開発したんすよ、けどそれアルコール混ぜないといけなくて」
リンさまがおかしかった謎はそれで解けました。
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