present | ナノ


▼ 

「しつこいっす殿下!ひとまず避難………へぶっ!!!!!」


ツバキさんが扉の前に来た瞬間、パタンと扉が閉められ、ツバキさんが扉に激突しました。


「い、いたたたた……」

振り返ったツバキさんを扉に縫い止めたのは――氷のような笑顔を浮かべたカイン伯爵の、両腕。


「ツバキ?いい加減に、しなさいね?」

その迫力と近すぎる距離に、ツバキさんの表情が変わります。


「う、あの……でも伯爵」

「でも、じゃないよ。謝りなさい。それから解毒剤をリンさんに渡す」

「ロ、ロリ……」

「謝りなさい」

「う、うう〜!近いっす伯爵!離れてほしいっす!」

「話を逸らさない。謝るまでどかないよ」

「ちょ、なななんで眼鏡取るんすか!」

「邪魔だからだよ」

「ちか、近いっす!!!これ以上近付かないでほしいっす!!!」

「さっさと謝らないとまた眼鏡割るよ」

「なんすかその脅し!!!」


ツバキさんの眼鏡を胸ポケットにしまったカイン伯爵は、片手は扉についたまま、もう片方の手でツバキさんの顎を持ち上げます。


「ツバキ?」

「……っ、わ、わかったっす!!!わかったから、謝るから離れ……あああもう!悪かったっす!カズマ殿下、悪かったっすから!!!」

顔を真っ赤にしたツバキさんは、じたばたと抵抗しながら叫びました。


「だったらいちゃついてないでさっさと解毒剤を持って来い」


カズマ殿下が剣をしまいながら命じます。


「よかったね、ツバキ。あとでしっかり反省してもらうけど、とにかく解毒剤持って来なさい」

カイン伯爵は、ツバキさんの眼鏡を戻すと、扉を開きました。

「わかったっすよ!ああ…ロリ……」


ツバキさんの背中を見送りながら、カイン伯爵がため息をつきます。


「すまなかったね、本当に。お詫びになるかわからないけれど、パーティーの後うちに泊まって行くといい。君たちがよければだけど」

「それは助かる。メイドを大人しくさせておいてくれるなら、の話だが」

「夜通し説教しておくよ」


以前のように、お二人の顔には疲労の色が。


すると、ツバキさんが小瓶を持って戻って来ました。

「リンさん、あの薬、ちょっとアルコール入ってたんすけど大丈夫でした?」

「えっ?あっ」

「少量で長く効くタイプの薬を開発したんすよ、けどそれアルコール混ぜないといけなくて」

リンさまがおかしかった謎はそれで解けました。

prev / next
(5/6)

[ bookmark/back/top ]




第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -