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そして戻ってみれば、冒頭の状況。


リンさまが正気であんなことをなさるとはとても思えません。

まさか、いつかのようにお酒を……?


カズマ殿下は、ため息をついてリンさまを見下ろしています。

「おい」

「はい、カズマ様」

「酒は入ってなかったぞ、どうした」


既にリンさまのグラスは確認済みのご様子。


「わかりません。寒いから、でしょうか」

「……上着を着ればいい」

「カズマ様の方が、あったかいです」

「……」


呂律は回っていますけれど、明らかにいつものリンさまではありえない発言ですわ。

その証拠にカズマ殿下がうろたえていらっしゃいますもの(無表情ですけれど)。


「カズマ様、こういうドレス、嫌いですか?」

「何故だ」

「さっき、変な顔しました。おかしくはないけど、嫌いですか?」

「……そういうわけじゃない」

「似合いませんか?」


言いながら、リンさまはカズマ殿下の膝に頬擦りをなさいます。


「……一体何に酔ったんだ、お前は」

「んん……カズマ様に?」

「馬鹿言うな」


リンさま、あのジュース以外特に変わったものは口になさっていないはずですけれど、本当にどうなさったんでしょう。


「似合いませんか?」

「そんなことは言っていない」

「だって話、逸らしました」

「……お前が触るからだ」

「触ったらだめですか?」

「……だめじゃない」


それを聞いたリンさまは、満足げに笑い、立ち上がりました。

両手を殿下の両膝に置くと、殿下の顔を覗き込むようにして、

「こういうドレス、嫌いですか?」



普段はゆったりとしたドレスを身につけていらっしゃるリンさまですが、今日のドレスは上半身がいつもよりぴったりしていて、華奢な背中や腰回りのラインがあらわになっています。



カズマ殿下は、眉間に皺を寄せ、しばらくリンさまを見つめていましたが、次の瞬間。


「ひゃあっ……!?」


手袋をはめた手でカズマ殿下がリンさまの腰を撫でると、リンさまの身体がびくりと跳ねました。


殿下はそんなリンさまを引き寄せると、立ったままの彼女の腰に腕を回して胸元に顔を埋めます。


「似合っているから、困る」

「あの……どういう意味ですか……」

「わかっているだろう」

「……あの、今からパーティーですから」

「わかっているじゃないか。先に誘ったのはお前だ」

「だって……」

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