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【蛇足】


風のように去って行った友人とその変態妻を、俺たちは呆れながら見送った。


ひとまず、変態から解放され、息をつく。


と。

「あの、カズマ様……えと、その、いつも……我慢、してるんですか?」


妻が怖ず怖ずと尋ねた。


「……」


服を掴みながら上目遣いでそんなことを聞かれても、困る。


俺は、ため息をついた。


「お前はあの変態の言っていた夜の生活とやらの話が全部理解できたか?」

「ええと……あまり……?」

「だったら我慢だとかそういうことは考えなくていい」

「そ、それはどういう……」

「今のままで構わない、という意味だ。深く考えるな」


妻は、難しい顔で首を傾げた。


あの変態に言われたことが、一部ではあるが的を射ていたことを、知られたくはなかった。



しばらく考える様子を見せていた妻は、不意に小さく笑うと、再び俺を見上げた。


「カヤさん、我慢はよくないって言ってました」


「……?」


「今のままでよくても、もし『もっと』ってカズマ様が思ってくれてるなら、私は、そんなカズマ様も、ぜんぶ知りたいです」


そして、妻は嬉しそうに微笑んだ。


「カズマ様が、私にだけ見せてくれる顔があるなら……カヤさんの言う『我慢できない』って気持ち、私にもわかるような気がするから」



『我慢はよくないぞ!』


変態の言葉に、俺は心の中で大きく頷いた。



その後、仕事にならなかったことは言うまでもない。



おわり!




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