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電光石火で宿をとり、部屋のベッドに俺を押し倒したカヤは、荒い息をしながら言った。
「先輩がやきもちを妬いてくれるなんて!嬉しすぎて鼻血が出そうだ!!!」
「鼻血を出すのはやめてくれ」
「努力する!先輩、私も先輩に言いたいことがあるんだ」
このままなし崩しに快楽の海へ堕ちていくものと思っていた俺は、多少拍子抜けした。
「何だ?」
「先輩はさっき私が3●をしようなどと言ったからやきもちを妬いたんだろう?」
正確には呆れてものも言えなかったのだが、まあそれを聞いて幸せな気分になったわけでもないから、俺は特に否定しなかった。
「あれは敢えて、先輩を混ぜなかったんだ」
「いや、そんな威張って言うことじゃないと思うんだが」
「理由がわかるか?」
「理由……?」
すると、妻は――カヤは、満面の笑みを浮かべて言った。
「先輩を、他の誰にも触らせたくないからだ!」
しばらく、俺はただ、妻を見上げていた。
「……おもいっきり自分勝手だな」
「呆れたか?」
「いや、その逆だ」
妻の腕を強く引き、肩を押さえつける。
形勢を逆転させ、俺はカヤを見下ろした。
「本当に、お前は変態だな」
俺が笑って言うと、妻は嬉しそうに破顔した。
――何で結婚したのかと、カズマは聞いた。
そりゃあ確かに、彼女は変態だ。性欲のかたまりだ。
だけど誰よりも自分自身の感情に素直で、そして、その全てで俺を好きだと伝えてくれる。
その、強引で自分勝手でめちゃくちゃな愛に、俺は溺れてしまっているんだろう。
もっと、溺れたいと、願っているんだろう。
end?
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