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▼ まいきゅーてぃーびーらぶど!

「久しぶりだな。元気そうで何よりだ」

「殿下こそ、お元気そうで」

「そんな呼び方をしなくていい。ここには俺とお前と妻しかいない。あの頃のように接してくれて構わない」

「……そうか、それは助かるよ、カズマ」

「傭兵仲間だからな、ムネマサ」


悪戯っぽく笑う、目の前の男は、この国の王子であり、俺の古い友人だった。


俺がかつて傭兵として働いていたころ、敵国に潜入していたこの男――カズマと出会った。

お互い口数は少なかったが何となく馬が合った。

彼が一国の王子だと知ったときには仰天したものだ。


潜入を終えたカズマは当然、自国に戻って行き、俺はとある国で正式に武官として雇われた。

一介の武官と王子殿下が顔を合わせる機会はなく、彼がうちの国の城に来ていても会うことはなかった。

ただ、カズマは完璧だとか無愛想なくせに妃を溺愛しているだとか、噂が絶えなかったから自然と動向を知ることはできていたのだ。


そんなカズマの国の王宮――その客間で俺が彼と顔を合わせている理由は、


「殿下!さりげなく私の存在を無視するのはやめてくれ!今日の主役だぞ!!!もちろんそれが君の屈折した愛情表現だとはわかっているが、」

「俺はお前を祝福していいのかいまだに迷っている」

「ああ…無理もない」

「チラリともこちらを見ない!!!全く、そそるな!!!!」


先程から俺の隣で頭痛を催すような言葉を羅列している女――彼女との、ことだった。


「何故こんな変態と結婚した、ムネマサ」

「いや、まあ、そりゃあ……」

「私と先輩が相思相愛だからに決まっているだろう!!!」

「貴様には聞いていない」

「ああ……!その冷たい目!たまらんな!!!」



そう。美しい容貌を完全に裏切るような発言を繰り返し、興奮に息を荒くしているこの女と、俺は先日結婚した。

先輩後輩の間柄だったから、結婚した今でも癖が抜けないらしく、よく『先輩』と呼ばれる。

結婚までの経緯は割愛するとして、普通、たかが臣下の結婚を他国の王子にわざわざ知らせ、あまつさえ謁見をするなどということはありえない。

しかし、俺とカズマが友人だったと知った我が国のアヤメ女王が面白半分にそれを命じたのだ。



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