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「まりかさん!わたし、めがさめたらこんなすがたに……!」
どう見ても10歳にも満たない幼い女の子――リンさまでした。
「リンさま、これは一体……!?」
激しく混乱した私は、リンさまの元に駆け寄ります。
「わ、わからないんです。ねるときまではふつうだったのに、おきたら、からだがちいさく……」
リンさま自身は当然、もっと混乱しているご様子でした。
そして、
「――――」
カズマ殿下は、絶句したまま、ベッドのそばに立ち尽くしていました。
「あの、殿下は何か、お休み中にお気づきのことなど、」
私の問い掛けに殿下は無言で首を振ります。無表情ながら、明らかに動転しているご様子。
無理もありませんわ。この状況を説明できる人が、一人もいないのですから。
――と。
「大丈夫?何か悲鳴が聞こえたけれど」
ひょい、とドアから顔をのぞかせたのは――
「あ……ええと、もしかしてその女の子はリンさん、かな?」
「えっ!?」
「あの、貴方は!?」
私たちが同時に声を上げた瞬間。
「貴様こそ誰だ」
素早くリンさまを背後に庇ったカズマ殿下が、警戒心をあらわにして目の前の人物を睨みつけました。
何故なら、そこに立っていたのは、黒髪に赤い瞳で背の高い――カズマ殿下より10歳以上は年上であろう、見たことのない大人の男性だったからです。
「ああ、そうだね。驚かせたかな。実は昨日も会ってるんだけど」
剣に手をかけたカズマ殿下に動じることもなく、小さく笑うこの人は、もしかして。
「カイン伯爵、ですの?」
私が尋ねると、男性はこちらに微笑みを向けました。
「そうなんだ。昨日の姿はうちのメイドがちょっとね……で、リンさんのそれも、たぶん、」
伯爵が何かを言いかけた瞬間、
「あああああーーー!!!!間違えたあああああああ!!!!あたしのショタがあああああああ!!!!」
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