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「どうして私は貴方のお家でケーキを食べているんですか!!!」

私は殺風景な時春さんの部屋で叫んだ。

目の前には食べかけのケーキ。



30分前――時春さんの部屋の玄関でケーキを受け取り、回れ右をしようとした瞬間、

『大変だ!お嬢さん、保冷剤をもらい忘れました!』

『は……?』

『お嬢さんの家にたどり着く頃にはケーキ傷んじゃってるかもしれませんよ、まずいなあ、どうしましょう!?』

『……』



ということがあり、結局私は――

「ケーキに釣られたんですよね?」


ニコニコ顔の時春さんに、何も言い返せない。


「……姑息です。わざと保冷剤もらわなかったんでしょう?」

「まさか!お嬢さん、未来の夫を疑うなんて妻失格ですよ」

「未来の夫ではないしそもそも現時点で貴方の妻じゃないので失格も何もありません」


などと言ってみたところで、おいしいケーキを口に運びながらでは何の説得力もない。

時春さんは私の最大の弱点をしょっちゅう利用する。誘惑に抗えない私も悪いのだけど。


と、時春さんがいきなり私の手からフォークを奪った。

「何するんですか!」

「お嬢さん、夕食のときから気になってたんですけど」

向かいの席を立ち、時春さんは椅子に座った私を、右側から覗き込んだ。

「変態行為、してほしいんですか?」

「はい!!!???」

私は耳を疑い、ガタンと立ち上がった。

なんとなく危険な予感がして、時春さんから距離をとる。

「だってお嬢さん、『変態行為もしてないのに楽しかったんですか?』って言ってたじゃないですか」

「それは貴方が変態だからそう言っただけで、」

「物足りなかったってことですよね?」

「誰がっ、」

「素直になってくださいお嬢さん」


じりじりと後ずさっていると、テレビのそばに敷かれた絨毯に足を取られ、私は尻餅をついてしまった。

その瞬間を逃さず、時春さんは私を仰向けに倒すと、片手で私の両手首を押さえた。

「何、するんですか……っ!この痴漢!」

「素直にならないお嬢さんにお仕置きをするんですよ」

「これ以上なく素直に嫌だと言ってるじゃありませんか!!!」

「嘘は駄目ですよ。大丈夫、夫婦生活の予行演習だと思えばいいんです」

「本番はありません!ていうか予行練習もないし結婚もしません!」

「なるほど、嘘つきな口を塞いでほしいわけですね。ちょっと待ってください」



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