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俺は大いに興奮しました。
そして、してほしいことはもちろん、たくさんありました。
いずれ夫婦になるんですから包み隠さず正直な気持ちを伝えるべきだと思い、俺はお嬢さんの目線の高さに合わせてしゃがみ込みました。
『そうですね、馬乗りになって俺のネクタイを引き抜きながら「お仕置きよ」って言ってそのネクタイで俺の手首を拘束してくれたら』
『???こうそく???』
『難しかったですかね?お嬢さんには』
『ええとね、よくわからないけど、おおきくなったらわかるのよね?わかるようになったら、あきね、おにいさまのしてほしいことぜんぶしてあげる!』
『お嬢さんは優しいですねえ……!ああそうだ逆にお嬢さんの腕を拘束して「お仕置きですよ」って言いながらあんなことやこんなことをするっていうのもありですね』
『えっ!?あきねがおしおきされちゃうの!?あきねわるいことしたの!?』
『違いますよ。これが大人の愛情表現なんです。悪いことをしてなくても、相手を気持ちよくしてあげるためにお仕置きをしたりされたり、っていうのはよくあることなんですよ』
『あいじょうなのね!だったらおしおきしてもいいよ』
『ほんとですか!いやあああやっぱりお嬢さんは最高ですね!!!じゃあかわりばんこにしましょうね!』
『いいよ!』
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「って言ってたのに」
「知りませんよ!!!!!!」
立ち上がってテーブルを強く叩いた私に、さっきよりもたくさんの人がこちらを見た。眉を潜められている。
「最低ですね、貴方って!どちらにしたって私は覚えてませんから、絶対に!無効ですから!!!!!」
周りの注目を浴びてしまったせいもあり引っ込みがつかなくなって、私はそれだけ言って速足で店を飛び出した。
「あっ、お嬢さん待って!――あっ、店員さんすみません、この人の名前でツケといてください。待ってくださいってばお嬢さん!!!」
来なくていいのに時春さんが私を追い掛けてくる。
「待ちません!ここでお別れです!ごちそうさまでした!」
「お嬢さん!ケーキ!ケーキ買ってあるんですよ、お嬢さんのために!待ってください!!!」
「……」
その言葉に、私は思わず立ち止まった。
「……どこですか」
「俺の部屋です」
「帰ります」
「待って!すぐそこですから!渡すだけですから持って帰って食べたらいいじゃないですか!!!」
「……」
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