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私たちの様子をじっと見ていたユキが、すたすたと歩いて私の背後でまるくなった。
背もたれができたようなかっこうになり、少しだけ私も楽になる。
「……」
なにげなく、投げ出された彼の手に触れると、触れた指を軽く掴まれた。
いつものような力はないけれど、こどもみたいなその反応がなんだかかわいくて、私は手をそのままにしておくことにした。
空いている方の手で、彼の髪を撫でる。
起こしてしまわないように注意しながら――その心配はいらないかもしれないけれど。
私のとは全然違う、真っ黒でかたい髪。
ゆっくりと撫でていると、私までまどろんでしまいそうになる。
だけど、起きていなくちゃ。
起きていたい。
彼の無防備な寝顔を、見ていたかった。
勝手にひざまくらをしたのは私だけど、なんとなくあまえてくれているみたいな彼がすごく愛しくて、それをずっと感じていたいと思った。
「カズマ様、私ここにいますから。ゆっくり休んでくださいね」
届かないとわかっていながら、言葉をかける。
少し、私の指を握る手の力が強くなったと思ったのは、気のせいだろうか。
彼にはいつもどきどきさせられてばかりだけれど、こんな風に穏やかに、二人で過ごせる時間も大切にしたい――そんな風に思えた。
「リンさま、先程陛下からの――あらっ?」
しばらくして、一枚の紙を手に中庭へやって来たマリカさんが、立ち止まって目をまるくした。
私は、微笑んで人差し指を口元にあてた。
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(6/10)