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「カズマ様っ、カズマ様っ……!」


私は動転して彼の身体を揺さぶった。



不意に――名前を呼ばれた気がして振り返ると、すぐそばに立っていたのは彼だった。

『カズマ様?』

何も言わない彼に首を傾げたとき、彼の身体がぐらりと揺れた。


『か、カズマ様っ……!?』

そのまま、糸が切れたように彼がこちらに倒れ込んだものだから、私はびっくりして、それでもなんとか両腕で彼を受け止めた。

顔をのぞき込むと、彼は目を閉じたまま、何の反応もしなかった。


だから私は、真っ青になって彼を呼び続けていたのだけれど――


「……もしかして、寝て…る……?」


よく見れば特に顔色が悪いわけでもないし、規則正しい呼吸も感じる。


彼の方が遅く寝て早く起きるから、私は彼の寝顔を見る機会が少ない。

それに、こんなに呼んでも目を覚まさないなんて、珍しいことだった。


「カズマ様……?あの、失礼します、ね……?」

なんとか、彼の頭を自分の膝に乗せる。

私の力では眠っている彼をベッドに連れて行くことはできないし、まさか王子殿下を地べたに寝かせるわけにもいかなかった。


私の膝をまくらにして、普段では考えられないくらい無防備に眠ってしまっている彼を、そっとのぞき込む。


「……執務室にも、ソファあるのにな」

眠気が限界に来てしまったのだろうということは容易に想像がつくけれど、どうして無理をしてまでこんなところまで来たのだろう、と不思議に思う。

倒れてしまうほど眠かったのなら、なおさらだ。


もしかして。


「……っ」

自惚れているかのような考えが頭をよぎって、私は恥ずかしさに首を振った。


だけど、自惚れてしまうのも、無理はないと思う。

あんなに頑なに、執務室の机から離れようとしなかった彼が、今ここで――私のそばで、心地良さそうに寝息をたてているのだから。


もしも彼が、私のそばでは心を緩めることができるなら、くつろぐことができるなら――それはとても、嬉しいことだった。



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