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「あるばーとさん、きのうよんだほんにぺっとのことがかいてありました」

「……ミリアム。もう本は読んでやっただろ?おとなしく自分の部屋に帰れ」

「はい、でも、おしえてほしいことがあるのです。あるばーとさん、わたしはあるばーとさんをやさしいきもちにしている、できてますか?」

「何だって?」

「ぺっとをかうと、やさしいきもちになるとかいてありました。わたしはあるばーとさんに、すむところをもらっています。かわりにやさしいは、あげられていますか?」

「……」


俺は返答に窮した。

『お前はいずれ、俺に大金を運んでくれるんだ。そんなものはいらないよ』

まさかそう言うわけにもいかない。さすがに、売り払う計画だということは誰にも話していない。


「ミリアムが来てから、ステラがよく笑うようになったよ」

「すてらさんがですか」

「お前に言葉を教えたり、一緒に庭で遊んだりするのが楽しいんだろう。ステラはお前が好きみたいだ」

「わたしもたのしい、すきです」

「そうか」

「あるばーとさんはどうですか?」

「え?」

「わたしをすきですか?」

「……」

「わたしはあるばーとさんがだいすきです。ぺっともかいぬしがだいすき、いいことだってかいてありました。あるばーとさんは、わたしをすきですか?」

「……当たり前じゃないか」


嘘はついていない。

嫌いなわけではないし、単純に『可愛いな』と思うこともある。悪い感情は持っていない。


けれど、ミリアムに対して罪悪感を覚えたのは、これが初めてだった。



その日の夜、喉が渇いて起き出すと、なぜかミリアムが暖炉のそばですすり泣いていた。

暖炉に火は入っていない。

声をかけると、しがみついて離れなくなったから、しかたなく俺の寝室まで連れて行き、同じベッドで寝た。

冷え切っていたミリアムの身体はすぐにあたたかくなり、俺はそのぬくもりに、何故かひどく安心した。



何か夢を見た気がするけれど、よく覚えていない。







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