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「私を殺したいなんて言ってる割には可愛いことしてるじゃない?陸。そのプリン、美味しいのかしら」

「うるせーですよ!!!お望みなら今ここで殺ってやりますよ!!!」

茶藤くんはそう叫ぶと同時に、セーラー服の少女に向かって刃物を投げた。その刃物、今、ポケットから出した、ような。

すると、メイド少女が放ったフォークが刃物の軌道を逸らす。その二つは、店の壁に鋭い音を立てて突き刺さった。

よく見るとセーラー服の少女は拳銃…らしきものを構えている。この状況は一体。


「花鳥殺す殺す殺す殺す!」

「陸、敬語」

「ですよー!!!!!!」

「陸が花鳥お嬢様への殺害行動を継続する場合私はその妨害の為陸の抹殺を実行します」


さっきまでケーキ屋だった場所は――刃物がぶつかる音と拳銃の発砲音、客の悲鳴、さらに『殺』という文字が飛び交う異空間に豹変した。


「ちょっと……私まだ死にたくないんだけど」

慌てて、残っていた限定ケーキを口にほうり込む。ゆっくり味わって食べたかったのに、何てことだろう。


とりあえずこの三人の側にいては即死確実だ。なんとかケーキをたいらげた私は、彼らから距離を取ろうと席を立った。


――と。

『ヒュンッ……!』

風を切る音が、耳元で鋭く響いた。

刃物が顔のそばを掠めたのだと、数秒あってから気付く。


「………ちょ、ちょっと。死にたく、ないんだってば」

腰が抜けてしまい、逃げたくてもテーブルの足元に座り込んだまま、動けなくなってしまった。


けれど、無情にも、フォークが私目掛けて飛んでくる。

妙にスローモーションでこちらに迫ってくる気がするフォーク。ああ、もしかして、死ぬのだろうか。

最期に食べたのが限定ケーキというのは悪くないかも、なんて、すごくどうでもいいことが頭をよぎりつつ、私は反射的に目を閉じた。


その時。


「香奈さん、危ない!!!」

聞き慣れた声がしたと思ったら、ものすごい速さの何かが、私を抱えてその場所から飛び去った。


「―――?」

ぎゅっと目を閉じていた私は、何が起こったのかさっぱりわからないまま、恐る恐る目を開けた。


すると。

私はなぜか宙に浮いていた。いや、正確には、少女漫画なんかでよくある『お姫様だっこ』というものをされていた。

私をそんな風に抱きかかえていたのは、

「香奈さんっ、大丈夫ですか!?」

「ジロー!………ジロー?」


私の(お試し)彼氏・柴田次郎――のはずなのだが。


「何、その……耳」


私を心配そうに見下ろす、ジローらしき人物の頭からは、きつね色のピンととがった犬の耳が……生えていたのだ。


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(7/20)

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