「欲求不満の塊だ。可愛いな」
「ふっ……んんっ」
太股を擦り合わせながら、水音を鳴らし続ける百原。
「雪野」
「んっ……」
彼女の右手は、自らのスカートの中に差し入れられた。
他人のものを舐め続けながら、自身のためにも指を動かし始めた百原。
「それじゃご褒美にならないだろ」
倉田の手が、今日初めて百原に触れた。
「あっ……」
彼女の右手を持ち上げた倉田は、中指の湿り気をぺろりと舐め取った。
「は、あっ……」
「何しても興奮するから可愛いよ、雪野は」
「んんんっ」
「もういいよ。立って」
部下を立たせ、その身体を両の指先で執拗に弄る倉田。
そのたびに、彼女は濡れた声を漏らした。
「はぁっ……倉田さ、服、じゃま、脱がして……あっ」
「着たままの方がいやらしいからこのまま」
「んっ……じゃ、もっと、もっとさわって」
「そんなに急かさない」
「ふ、……ああっ」
「雪野の『交換条件』は大正解だったな」
片膝に彼女を乗せて向き合い、倉田は笑った。
下着は足首に引っ掛かっているから、倉田のズボンには染みがついた。
「『殺した人数分だけ、倉田さんとセックスしたい』――雪野は俺とセックスするためにどんどん殺す。ロバの耳は大喜びだ」
「だってずっと、倉田さんとセックスしたかったから……」
「それから俺にとっても大正解だ」
「え?んんっ!」
倉田の舌が、百原のあたたかい口内に無遠慮に侵入した。
グチャグチャと音をさせてキスを繰り返し、二人の息が上がった頃、やっと唇は離れた。
「人を殺した後の雪野は、いつもより数倍いやらしいから、欲情する」
「っ……!」
堪えきれなくなったのか、百原が声を絞り出した。
「くらたさん、はやく……はやくいれて」
「そうやって急かすのがたまにきずだな。俺はじっくりしたいのに」
でもご褒美だからしかたない、と倉田は百原を抱きかかえ立ち上がった。
壁際に人体実験用の手術台がある。
そこへ百原の身体は、押し倒された。
これまでここに横たわるのは、倉田の実験台になるときだけだった。――だが今では、倉田に抱かれるためのベッドだ。
「あっ、私がうえ……うえがいい」
「前回そうしただろ。後からしたらいいから」
「じゃあ、さわりながら、いれて……」
「いやらしいな。好きだよ」
「ああっ……!」
あまり大きいとはいえない胸のふくらみ――その頂を、倉田の指先が弄ぶ。
同時に、百原の待ち望んだものが、ゆっくりと挿し入れられた。
身体を揺らしながら、百原は淫らな声を上げる。
完全防音の研究室では、声を抑える必要もない。
「くらたさ……、明日と、明後日も、してね……?」
「うん」
「次の任務の時もたくさん殺すから……また、してね?」
「うん」
「くらたさんっ……きもちいい」
「俺も気持ちいいよ」
「すきっ……!」
「俺も好きだよ」
倉田は、果ててしまうぎりぎりのところで何度も堪え、長い時間をかけて百原を抱いた。
それでもついに全てが終わり、二人は手術台にぐったりと倒れた。
「でも百原さん、いくらご褒美が欲しくてもリストにない人間を殺さないように」
「はい、倉田さん」
無口で無表情、冷たい瞳が美しい女は――白衣を肩に掛け、無邪気に微笑んだ。
百原雪野は、ご褒美のために暗殺をする女である。
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