それから、毎晩のように『えろっ娘☆ももちゃん』で抜いた。
そんなことは知らない先輩たちが、何度か野村を風俗店に引っ張って行ったが、彼は全く興奮できなかった。
生身のももちゃんを抱くしか、『えろっ娘☆ももちゃん』を超える興奮は味わえそうになかった。
しかし、彼にそんな勇気はないし、同人誌で軒並み満たされていた。
****
「君が暗殺部隊の大型新人か」
ある日、野村は白衣を着た長身の男に声を掛けられた。
「科学部隊の倉田だ。よろしく、野村くん」
暗殺部隊の面々に比べれば線が細いが、この男は程よく鍛えているのか、しなやかな体つきをしていた。
科学部隊の倉田といえば、天才研究員と名高い倉田慎一郎だ。
そう、科学部隊での百原の直属の上司。
「俺……いえ、自分に何か?」
「新型の武器が完成してね、ぜひ君にモニターをお願いしたいと思って」
「え、何故自分が、」
「百原さんが、野村くんが一番使いこなせるだろうと太鼓判を押したから」
「も、百原先輩がですか!?」
野村は飛び上がった。
百原が自分をそんな風に評価してくれていたなんて。
彼女の視界に自分が入っていたことが信じられなかった。
「承諾してもらえるならこの書類にサインをしてほしいんだ。モノは次回の訓練のときに百原さんに持たせるから」
「は、はい!サインさせていただきます!よろしくお願いします!」
「ははっ、野村くんは百原さんを慕ってくれてるんだな」
「皆、百原先輩に憧れています!もちろん自分もですが!」
「百原さん、喜ぶよ。それ、伝えてあげたらいい」
倉田はひらひらと手を振り、その場を離れていった。
「ふーん、嬉しそうにしちゃって」
「うわっ!み、三奈木さん!」
いつからいたのか、医療・救護班の三奈木里美がジト目で野村を見ていた。
「何も知らないって、幸せねー」
「?」
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三奈木の言葉が引っ掛かったのは始めだけで、野村はすぐに深く考えることをやめた。
帰寮し、『えろっ娘☆ももちゃん』を手に布団を被る。
(『太鼓判』かあ……『伝えてあげたらいい』かあ……)
幸せな気分をもたらしてくれた倉田に感謝しながら、野村はズボンをおろした。
(生身のももちゃんとセックスは無理でも、少しくらい近づこうと頑張っても、いいのかな)
一番気に入っている、年下の男にももちゃんが襲われる本をぱらりとめくる。
「ああ、もう……っ、ももちゃん、……っ好きだっ」
野村颯斗は、上司が主人公のエロ同人誌で抜く男である。
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