運命の人(仮) | ナノ


 

日付が変わってから一同は解散し、私にはジローの部屋があてがわれた。ジローはお兄さんが使っていた部屋で寝るらしい。


ジローの部屋は、アパートの部屋と同じように綺麗に片付いていた。

違うところといえば、勉強机があってその上に教科書や参考書が置かれているくらいだろうか。


それから、何枚か写真が飾られている。

高校時代だろう、バスケ部の集合写真には髪が黒いジローが写っていた。

その横に飾ってある写真には、オネエ風の男に腕を組まれ、美容室の前でピースをする茶髪のジロー。

確か、いつも髪を切ってくれるのは『地元のすごく面白い人』と言っていた。この人なのだろう。おまかせすれば、髪型も色もいい感じに仕上げてくれるとか。

これはきっと、大学入学前なのだろう。あまり見た目は変わっていなかった。



写真を眺めていると、ノックの音がした。

「香奈さん、入っていいですか?」

ジローがあったかいお茶を持って入ってきた。



「相変わらずうるさい家族ですみません」

「楽しいからいいわよ。私こそ、お母さんのお言葉に甘えすぎて何もしてなくてごめん」

「夕食の後片付けしてくれたじゃないですか」

「それはジローも手伝ってくれたし」

「香奈さんにだけやらせるわけにはいきませんもん!」


ベッドに並んで腰掛けて、他愛もない話をしているうちにだんだん酔いが醒めてきた。(酒が強いと言われるが、多少は酔うのだ。ジローとは違う)


「ご両親、そっくりよね」

「えっ?俺にですか?母さん似とは言われますけど、」

「いや、性格が」

「ああ!そうですね〜、柴田家では俺がいちばん根暗ですもん」

「……確かに」


知り合ってすぐならそうは思わなかったかもしれないが、ジローと付き合っている今、それは納得の事実だった。


お酒の力も手伝って柴田家に順応したけれど、冷静に考えるととんでもないことである。

彼氏の両親というより、仲良しの親戚のようだ。

これでいいのか不安になるが、……まあ、いいのだろう。


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