カザミ将軍観察記録〜休日編〜
ある春の朝。空は晴れて、風はとってもきもちいい。
「あら?ユナ、今日は非番じゃありませんでした?」
「マリカさん。えへへ、ちょっと用事が……」
怪訝な顔をする先輩女官の横をそそくさと通りすぎ、私は、とある場所へと向かった。
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――カザミ将軍。
笑顔が素敵で、優しくて、誰よりも剣の腕がたつ、私の憧れの人。
もちろん私のような一女官が気安く声を掛けられるような方ではないから、ほとんど会話なんてしたことがない。
だけど、私は、カザミ将軍のことが、もっと知りたい。
『ご結婚なさってるか?……そういや、カザミ将軍とそんな話したことないなあ』
『物腰は柔らかいし気さくだけど、あまり私生活のことは話してくださらないし、なんとなく俺たちも聞きそびれてるな』
『カザミ将軍はほら、陛下と殿下にお仕えすることが全て、ってかんじだからなあ』
『まあそれは俺たちもか!あはは!』
『それとお妃様にもですよ!』
『お前はお妃様お妃様言い過ぎだろ、斬られるぞ』
仲の良い兵士たちからは、何の情報も聞き出せなかった。(カザミ将軍はミステリアスである、という新しい魅力は発見したけれど)
だから私は、自分の目で、カザミ将軍を知ると決めたのだ。
カザミ将軍は、王宮に部屋を与えられており、普段はそこで暮らしていること。
王宮の外にも家を持っており、非番の日はそちらに帰宅すること。
非番でも、朝の兵士たちの稽古に付き合ってから王宮を後にすることが多いこと。
――数少ない情報を頼りに、私は、カザミ将軍の私生活を知るには今日が最適だと判断した。
カザミ将軍も、今日が非番なのである。
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