3周年リクエスト | ナノ


 甘い恋人

王族にとって『誕生日』は、記念日ではなく『行事』のようなものだ。

もちろん、私も王族である以上、今日という日は『自分のための一日』ではなかった。


儀式が執り行われ、たくさんの贈り物が届けられ、披露される。(当然その中には夫である彼からの贈り物もある)

私は集まってくれた人たちに感謝の挨拶を述べて、晩餐会では彼らをもてなす。

誕生日が『自分のもの』でないことに、疑問も不満も抱いたことはない。

故郷にいた頃と同様に、この国で迎える初めての誕生日でも、それは変わらない。



とは言え、やっぱり少しだけ――


「疲れたなあ……」


豪華に着飾ったドレスを脱ぎ、くつろいだ姿で自室のソファに身体を預けた。


そばではユキが絨毯に寝転がっている。

マリカさんの手によって、今日限定で赤い蝶ネクタイが首に巻かれていた。


「みんなが私を祝ってくれてたんだから、疲れたなんて言っちゃいけないよね」


ユキを撫でながら話しかけると、同意するように鼻を鳴らされた。


これから部屋に戻ってくるはずの彼にも、疲れた顔を見せては心配をかけてしまう。

せめてマリカさんに何か食べるものをもらっておけばよかった。もてなすばかりで食事をあまり摂っていない。


「今からでも、間に合うかなあ……」


そろりと部屋の扉を開ける。マリカさんはまだ忙しいだろうか。ちょうど通りかかったり……するわけないか。


きょろきょろと辺りを見回すけれど、誰も行き来する様子はない。


「まだみんな後片付けで大変、かな……」


食べ物を手に入れるのは諦めよう。




prev / next
(1/6)

back/top




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -