神様の花嫁
「そなたに『花嫁の使い』を命じよう」
「はあっ!?」
いきなり俺を呼び出した主が、開口一番わけのわからないことを言った。
バイオレットブルーの髪、同じ色の瞳。飾り立てられた椅子に腰掛けているこの青年は、強さと美しさ、威厳を備えた堂々たるたたずまいをしている。
が。
「私はやっと、花嫁にしたいと思う娘を見つけたのだ」
「はああっっ!!??」
「そなた先程から『はあ』しか言っていないが、言葉が喋れなくなったのか?」
「ちげーよ!話に着いて行けてねえんだよ!このアホ神!!!」
俺が叫んだ瞬間。
「不敬ですよ、ヨタカ。羽根をむしられたいのですか?」
いつの間にか背後に立っていた美しい女たちが、俺の背中に生えた白い羽根を鷲掴みにした。
「ぎゃあああやめろ!羽根に触るな!ゾワゾワする!」
「天使の弱点は羽根だものね。わざとやっているの、当然じゃない」
「俺は人間だ!!!」
「まだそんなことを言っているのですか、愚かな天使だこと」
その後、女たちに口々に罵られる。
もちろん彼女たちの背中にも、立派な羽根が生えていた。
「ヨタカ、あなたね、ハジャルさまに拾われたからって大きい顔しすぎよ?」
「貴方は本来、天使になる資格すらない人間のクズだったのですからね」
「神に直接お情けを賜るなんて本当にありえないこと。それがいかに身に余る光栄か、もう少し考えたらどう?」
三人がかりで威圧してくる女たちに俺が後ずさりをしていると、
「天使長たち、あまりヨタカを虐めてやるな。順を追って話さなかった私が悪い」
低い声が、彼女たちを平伏させた。
「申し訳ございません、出過ぎた真似を!」
「この馬鹿者の所業にどうしても黙ってはおれず……大変ご無礼を致しました!」
「いかようにもご処分を!」
「いや、そのように恐縮するな。そなたたちも少しくらいはヨタカのようにくだけて接してくれても構わないのだぞ?」
「なんと勿体ないお言葉!」
「しかしあまりに畏れ多うございます!」
「そのお気持ちだけで我々は今死んでも構わぬほどに幸せでございます!」
女たちはますます姿勢を低くしてしまいには嬉し泣きをし始めた。
いかれてやがる。
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