リクエスト | ナノ


 

計画の実行は、二週間後ということになった。


そして、『この計画なら、いっそ父様にも私たちが会ってることを気付かれない方がいいわね!』というマリーの意見から、夜ひそかに高遠の客室で『恋人のレッスン』をすることになった。



しかし――


「ただの日本文化勉強会じゃないか」



うんざりとした表情で、高遠はため息をついた。



「だって恋人のレッスンよりこちらの方が楽しくて!」

「そもそも恋人のレッスンなんてものはこの三日間一度もした覚えがないぞ」

「したいの?龍之介」

「そういう話じゃない。言っておくがレディ、結婚生活のためにと先に持ち掛けてきたのは君だ」



それなのに、三日間の話題は、骨董品の知識、商売相手との面白エピソード、日本の祭について、――全くそれとは関係のないものばかりだった。

先程までの話題は、着物の柄が表す意味について。マリーは実に嬉々とした表情で話を聞いていた。



「だって龍之介、私は何を教わればいいのかさえ全くわからないのよ。それに目の前に日本人の貴方がいるんですもの、好奇心が抑え切れないわ!」


憧れを凝縮したような瞳で、マリーは高遠を見る。



「成る程ね」


高遠は、寄り掛かっていた壁を離れ、寝台に腰掛けたマリーの前に立った。


「じゃあ俺が、君を骨董品やら着物よりも夢中にさせなくちゃならないわけか」


低い声で言うと、マリーは何度か瞬きをした。


「龍之介……?」


自分の名を呼んだ唇に、高遠は人差し指を当てる。


「箱入りのレディには想像もつかないようなことを教えてやれば、そちらへの好奇心も抑え切れなくなるのかな?」


挑発するような笑顔を向けると、マリーは戸惑うように高遠を見上げた。


「え、と……龍之介……?」



「――とまあ、こういう軽いことを言う男を君の父上が選んでいるとは思えないが」


さっと手を引き、高遠はマリーから少し距離を置いて彼女の隣に腰掛けた。

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