転生の扉に近づけるのは生まれ変わる天使と神だけらしく、ハジャルだけが俺に最後まで付き添うという形になった。
「ったく、サーシャに余計なこと喋りやがってよ」
「すまぬ」
扉に向かいながら軽口をたたく。
頭を掻きながら苦笑するハジャルと並び、扉の前に立った。
扉に手をかけたところで、ハジャルはこちらを向いて俺を見据えた。
「――もうひとつ、謝らなければならぬことがある。そなたの気持ちに気付いていながら、知らぬふりをしていた。サーシャの気持ちがそなたに向くことを恐れて。すまなかった」
深く頭を下げる主に、俺は呆れる。
「アホだな。ほんとにカミサマらしくねえ」
ハジャルは、照れたように笑った。
「もう少し、しっかりせねばならんな」
「まったくだ。サーシャに愛想尽かされねーようにしろよ」
「ああ、精一杯努力する」
扉がゆっくりと開く。
「じゃあな」
「ああ」
一歩踏み出すと、真っ白な光に包まれて目が眩んだ。
身体が、光に溶けていく感じがする。
だんだん、意識までも溶けて、薄まっていく。
「私もそなたが、大好きだったぞ」
ぼんやりとその言葉を聞いたのを最後に、俺の全ては――光の中に溶けていった。
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