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「強がりはよせ。まあとりあえず細々した説明をするのは下っ端の役目だ。あんたは説明に間違いがあったときだけ訂正してくれればいい」


「……すまぬ。頼む」


やはり強がりだったらしい。

見た目以外に神の威厳が全く感じられないヨタカの主は、情けなく頭を下げた。



「ねえ、この人ほんとに神様なの?」

「傷をえぐってやるな」


左手で心臓を押さえたハジャルを横目に、ヨタカは一冊の分厚い本を開いた。


「俺も付け焼き刃だからな、表面的なことしか知らねえが」

そう前置きしてから、ヨタカはあたしの前であぐらをかいた。

あたしにも座れと合図する。


神様の前で地べたに座っていいのかと一瞬思ったけれど、その神様は心臓を押さえたままうなだれていたので問題ないと思うことにした。


「まず、神が選んだ花嫁は絶対、ってのは話したんだったか?」

「それらしいことは、さっき……」


ヨタカは、天啓のような形で神には花嫁がわかることや、それが間違っていることは絶対にないこと、自らは迎えに行くことができない為『花嫁の使い』をたてることなどを教えてくれた。

つまりヨタカが『花嫁の使い』だから、今日あたしを迎えに来たということらしい。


「で、お前がこいつの花嫁になることを承諾したとする。神にとって花嫁は違えることのない唯一無二の存在だが、相手にとってもそうとは限らねえ。――それでだ。神の花嫁の不貞は死よりも重い罪になる」

「はあっ!?」

まだ結婚する気さえ起きないのに唐突に不貞の話をされて、あたしは顔をしかめた。

だいたい不貞だなんて、失礼な話だ。


ヨタカは苦笑して、「まあ聞け」とあたしを宥めた。

「花嫁は魂ごと消滅して二度と生まれ変われない。魂を消滅させる過程で天変地異も起こるから、地上でたくさんの人間が死ぬ」

「やだ、何それ……」


魂が消滅、というのはピンと来ないからいいとして、自分のせいで天変地異が起こるかもしれないなんて――そんな重すぎる責任はとても背負えない。


真っ青になったあたしを気遣うような口調で、ヨタカは言葉を続けた。

「だから、それを防ぐためにも、お前には決める権利があるんだ。こいつの花嫁になるかどうか。いくら時間がかかってもいい。この宮殿からは出られないが、ゆっくり答えを出すことができる」


「断ってもいい、ってこと?」


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