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■恋人の誕生日


(1)

「フィリス、もうすぐアルバートさんのお誕生日なんです。なにをあげたらよろこんでもらえるでしょうか……?」

「あたしはアルバートの好みなんて知らないからなあ、ミリアムの方がよくわかってんだろ。――ちなみに今までは何あげてたんだ?」

「はじめてのときは、はじめてひとりでおつかいに行ってステラさんとケーキを作ってお花もあげました。あとは似顔絵を描いたりハンカチを縫ったり……去年はお金がなかったからお誕生日のうたを歌ったらよろこんでくれました」

「アホバートさんのことだから何もらってもうれしいんじゃないのか?そのへんに生えてる草でもやっとけ」

「そういうわけにはいきません!今年は、こ…恋人になってはじめてのお誕生日なんです!」

「ああ、なるほど、それで悩んでるわけか。なら簡単じゃないか。薄着して『アルバートさん、アタシを食べて』でいいだろ。ケーキのクリームをほっぺに付けたらなお良し」

「こ、恋人ってそんなことするんですか!?」

「ベタなやつだろ」

「人間のお肉はまずいって本に書いてましたよ……?」

「……ミリアム」

「なんでそんな遠い目をしてるんですか?フィリス」

「……そうだな、あたしが悪かった。ミリアムのウブさをなめてた。アタシを食べては却下……いや待てよ?」

「フィリス?」

「いいかミリアム、今からあたしが言うとおりにするんだ。エロバートは度肝を抜かれ…いや喜ぶ。間違いない」


(2)

「アルバートさん、お誕生日おめでとうございます。これ、わたしが作ったケーキと、それから……」

「ミリアム?顔に生クリームがついてるぞ?」

「『アルバートさん、わたしをたべてください』」

「!!??」

「『恋人になってはじめてのお誕生日だから、とくべつなものをあげたくて』」

「ミリ、」

「ええと……『たべごろですよ?』」

「ミリアム、待て、何を、待て、」

「『はやくたべないと、だれかにつまみぐいされちゃうんですからね?』」

「…………なるほどあのクソガキの仕業か」

「あの、アルバートさん?たべないんですか?」

「ミリアム、意味をわかって言ってるつもりか」

「ほんとに頭から食べられたりはしないから大丈夫、なんですよね?ええとでも、ちょっといたい?とか?」

「……」

「じゃあどうやってたべるんでしょうか?アルバートさんはよく知ってる?んですよね?」

「……」


(3)

「ミリアム!どうだった!?」

「ほっぺたの生クリームを取って食べて『今はまだこれでいい』って言ってました」

「ふっ……ヘボバートさんめ」

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