と。
「他人事のように、そうやってトバリが平然としているのは、諦めているからですか?」
相槌も打たずに聞いていた少女が、何でもないような声で、ぽつりと言った。
「諦めって、強がりと同じなんですね」
小さな発見をした、というように、呟く。
またもや立ち止まり、振り返ってしまった。
「全く意味がわからない。何でそうなるんだ。だいたい諦めだとか強がりだとか、そんな感情の話はしてなかったはずなんだが」
不快に思ったわけではなく、単純に意味がわからなかった。
決めつける、というには少女の声は強さを持っておらず、それでいて自分の言葉を純然たる事実だと認識しているようでもあった。
「そうですね……」
少女は少し考える様子を見せてから、こちらを見た。
「同じような境遇の人がたくさんいたって、トバリはこの世界にひとりだけですし。そのトバリが生きてきた中でいちばん辛かったことやいちばん悲しかったことって、あるはずですよね」
伝えようとしているのか、自分の中で考えを纏めようとしているのかよくわからないような口調で、少女は言葉を紡いだ。
「その時、いちばん辛い、いちばん悲しい、って、泣きわめいてしまえばいいのに。絶望を受け入れてしまえばいいのに。きっと私ならそうすると思うんです。それをトバリは、受け流してきた?……のでしょうか?」
誰に尋ねるわけでもなく、疑問符を付ける。
「受け流して、平然としていられたらきっと、痛くはないのかもしれないです。私にそれができないのは、期待をしてしまうから。だけど期待しなければ、諦めれば、痛くない。――それって強がりでしょう?」
やけにこんがらがったところから、ぽん、と話が飛躍した。そして、
「痛くない、って強がりのひとが言うことでしょう?」
妙に子供っぽさを感じるような表現を、少女はした。
「自分を強がりだと思ったことはないが」
俺の言葉を聞いているのかいないのか、少女はさらに続けた。
「一回ぺちゃんこになってしまったほうが元気に起き上がれるんだ、って祖父はよく言います。だけど、元気になりたいって思えなきゃ、ぺちゃんこになんてなれない」
そして、納得がいったように笑う。
「だからトバリは、私には強く見えるんですね。私が子供で、トバリは強がりだから」
どうやら、こちらの否定も虚しく『強がり』は確定のようだ。
しかしそれが少女の目に映ったものなのだとしたら、そう感じるのは少女の自由で、とやかく言うことではない。
――と思えるような自然さが、少女の言葉や口調に存在していたせいでもある。
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