ゲラゲラと笑いながらこちらを見下ろす男たちに囲まれ、俺は絶望的な気分になった。
もちろん痛いのは嫌に決まっている。再起不能はさすがに困る。
しかし、それよりも――
「いいから貴様ら、さっさとやれ」
俺の思考は、スーツの男の一言で中断された。
男の言葉を合図に、まず一斉に蹴りを入れられる。
足蹴にされ、踏みつけられ、口の中を切った。
「……っは……!」
俺には抵抗するほどの体力はない。情けなくはいつくばることしかできなかった。
髪を掴まれ、無理矢理身体を起こされる。
「いてえか?兄ちゃん」
執拗に、腹を殴られた。
「……っ、」
痛い。
かなり痛い。
しかし、意識を失ってはいけない。
ここで俺が気絶してしまえば――『止める人間』が、いなくなる。
「弱っちいなー」
どさり、と地面に放り投げられ、俺は俯せに倒れた。
「つまんねえからさっさと終わらせようぜ」
一人の男が取り出したのは、鋭利な刃物。
これはかなり痛そうだ。
いや、痛いどころではない。
俺は、油断すれば霞んでしまいそうになる意識を必死で保ちながら、なんとか身体を起こそうと腕に力を入れた。
「お前、弱いくせに往生際悪いな。逃げれねえって――――、」
厭らしい笑いを浮かべた男は、その表情のまま、ぴたりと動きを止めた。
いや、止まった――止められたのだ。
そして。
男の身体がゆっくりと倒れていくその背後には――銀の髪をなびかせた小柄な少女が立っていた。
「……!」
スーツの男の顔が引き攣る。
周りの男たちの表情にも緊張が走り、全員が身構えた。
「……」
みすずは、無表情でこの場をぐるりと見回したが、俺の姿を確認すると、泣きそうな顔になった。
「義高さん、ごめんなさい。私が少し目を離した隙にこんなことになって」
そして、
「すぐに終わりますから、待っていてくださいね」
そう言って男たちに向き直ったみすずの目は、背筋が凍るほど冷たかった。
「待て、みす、」
俺が言いかけた時にはもう、手下の男たちは全員、仰向けに倒れていた。
何が起こったのか俺には全く見えなかった。
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