偽物の姉、偽物の弟。
はじめから、偽物のきょうだい。
本物になど、なれなかった。
だからきっと、恋をした。
そして、それすらも、偽物だった。
弟にもなれない、恋人にもなれない、哀れで滑稽な、機械人形。
機械人形を愛した、愚かで滑稽な、人間の女。
私たちは、それ以外のものには、なれない。
――だが、それならば、本物とは、何なのだろう。
偽物であっては、なぜ、いけないのだろう。
本物だと、偽物だと決めるのは、誰なのだろう。
私と弟のことを、私と弟以上に誰がわかるというのだろう。
――確かなのは、失ったこと。
そして残ったのは、この心だけ。
こんなにも痛くて、こんなにも重たくて、こんなにも苦しい。
心の場所が何処にあるか、わかってしまうくらいに。
消去してしまえば無かったことになってしまう、弟の『心』は、一体何処にあったのだろう。
痛みを、重さを、苦しみを、どうやって感じるというのだろう。
「やっぱり、私だけだわ」
命のにおいがしない弟の部屋で、私はひとり、立ち尽くした。
****
prev / next
(4/7)