リクエスト | ナノ


 

偽物の姉、偽物の弟。


はじめから、偽物のきょうだい。


本物になど、なれなかった。


だからきっと、恋をした。


そして、それすらも、偽物だった。



弟にもなれない、恋人にもなれない、哀れで滑稽な、機械人形。

機械人形を愛した、愚かで滑稽な、人間の女。


私たちは、それ以外のものには、なれない。



――だが、それならば、本物とは、何なのだろう。


偽物であっては、なぜ、いけないのだろう。


本物だと、偽物だと決めるのは、誰なのだろう。


私と弟のことを、私と弟以上に誰がわかるというのだろう。




――確かなのは、失ったこと。


そして残ったのは、この心だけ。



こんなにも痛くて、こんなにも重たくて、こんなにも苦しい。

心の場所が何処にあるか、わかってしまうくらいに。


消去してしまえば無かったことになってしまう、弟の『心』は、一体何処にあったのだろう。

痛みを、重さを、苦しみを、どうやって感じるというのだろう。




「やっぱり、私だけだわ」




命のにおいがしない弟の部屋で、私はひとり、立ち尽くした。



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