リクエスト | ナノ


 

そしてそんな時、彼女は俺を殴ったりはしないが、すぐに俺を家にぶちこんで、手足を拘束し、泣きながら抱き着いてくるのだ。

『痛かったですか!?傷が残ったらどうしよう!うわああん!』

『心配しすぎだ。縄を解いてくれ』

『危ないからだめです!』


そもそも自分はしょっちゅうボディブローをかましておいて何を言っているのだ、と思う。


――たぶん、みすずは、俺が自分以外の何かに傷つけられるのが嫌なのだ。

最初に言っていたことではあったが、その対象は生き物だけではないということだ。


やきもちを妬いている時とは違って、簡単には解放してもらえず、擦り傷が消えるまで監禁状態だったこともある。

過保護で過激で、病的な心配の仕方だった。


しかし、そこには怒りだけでなく不安もあるようで、やきもちの時のように軽くあしらうのが難しかった。

怪我をしたからと言って死ぬわけでもないはずなのに、何が不安なのだろう。


この上、俺が悪意を持って誰かに傷付けられたりしたら、どうなってしまうのか――みすず自身も、俺も、傷付けた相手も。


しかし、そんなことは平和な現代でめったにあることではない。他人と関わりの少ない俺には尚更。

だから、俺はそのことも深く考えなかった。



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