『姉さんが、好きだよ』
『何を、言っているの』
『ぼくは、姉さんがぼくの姉さんだからじゃなくて、姉さんが姉さん自身だから、好きなんだよ』
『おかしいわ』
『おかしくなんかないよ。血が繋がっていないんだから』
『聞いたの』
『うん。だから、ぼくが姉さんを好きなことは、何もおかしくないんだ。だから、姉さんの気持ちを、聞かせてほしいんだ』
『おかしいのよ。おかしいの。あなたがそう、思うことが、おかしいのよ』
だってあなたは、
『機械なのだから』
不思議そうに目を細める弟に、全てを話した。
弟が欲しかったこと、父親がアンドロイドを連れて来たこと――それは欠陥品であったこと。
『あなたのその、私を好きだという感情に、嘘はないんでしょう。アンドロイドは嘘がつけないもの』
弟は、何も言わない。
『だけど、本物じゃないわ、偽物なの。嘘ではないけれど、偽物なのよ』
弟は、何も言わない。
『私が例え、どんなにあなたを愛しても、本当に通じ合うことなんてできない。あなたにそんなつもりなんてなくても――いいえ、だからこそ、私にとっては死ぬまでずっと、一方通行の想いだわ』
弟は、何も言わない。
『あなたのその感情が偽物だとわかっていて受け入れてしまえば、私の感情も偽物になってしまう。そんな気がするの』
弟が、いつしか動かなくなっていることに気付いてはいたけれど、私は語りかけることを止めなかった。
『私があなたから与えてほしいものは、あなたには絶対に、与えることができない』
そうして、動かなくなった弟――であった『物』から目を逸らした。
『だけど、愛していたわ、あなたを』
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