リクエスト | ナノ


 

『姉さんが、好きだよ』


『何を、言っているの』


『ぼくは、姉さんがぼくの姉さんだからじゃなくて、姉さんが姉さん自身だから、好きなんだよ』


『おかしいわ』


『おかしくなんかないよ。血が繋がっていないんだから』


『聞いたの』


『うん。だから、ぼくが姉さんを好きなことは、何もおかしくないんだ。だから、姉さんの気持ちを、聞かせてほしいんだ』


『おかしいのよ。おかしいの。あなたがそう、思うことが、おかしいのよ』



だってあなたは、


『機械なのだから』



不思議そうに目を細める弟に、全てを話した。


弟が欲しかったこと、父親がアンドロイドを連れて来たこと――それは欠陥品であったこと。



『あなたのその、私を好きだという感情に、嘘はないんでしょう。アンドロイドは嘘がつけないもの』


弟は、何も言わない。


『だけど、本物じゃないわ、偽物なの。嘘ではないけれど、偽物なのよ』


弟は、何も言わない。


『私が例え、どんなにあなたを愛しても、本当に通じ合うことなんてできない。あなたにそんなつもりなんてなくても――いいえ、だからこそ、私にとっては死ぬまでずっと、一方通行の想いだわ』


弟は、何も言わない。


『あなたのその感情が偽物だとわかっていて受け入れてしまえば、私の感情も偽物になってしまう。そんな気がするの』



弟が、いつしか動かなくなっていることに気付いてはいたけれど、私は語りかけることを止めなかった。



『私があなたから与えてほしいものは、あなたには絶対に、与えることができない』



そうして、動かなくなった弟――であった『物』から目を逸らした。



『だけど、愛していたわ、あなたを』




prev / next
(3/7)

bookmark/back/top




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -