私は、夜更けに目を覚ました。
いつの間に、ベッドに入ったのだろう。
彼は、私を抱きかかえるようにして眠っている。
このひとが、ほしい、と。
自分の言った言葉を思い出し、私は恥ずかしさに両手で顔を覆った。
そこで、左手の薬指に光る、指輪に気付く。
誓いで、証で、私を彼に縛り付けるためのもの。
彼は『気が咎める』と言ったけれど、私はどういうわけか、そのことが心地良かった。
きっと、彼と同じ。
おかしいだろうか。
間違っているだろうか。
それでも、よかった。
左手の薬指に指輪をはめて眠ることは、願いごとを意味するのだと、彼は言った。
それならば、このあまい痛みを、焦げつきそうな熱を、泣きたくなるくらいの想いを――生涯忘れることのないように。
彼の左手を握り、その薬指に小さくキスをして、私はそう願った。
end
‐epilogue‐
「カズマ様、あの……私からも指輪、あげたくて、シロツメクサの指輪、作ったんです」
「……」
「職人さんにいろんな指輪を見せてもらったんですけどどれがいいかよくわからなくて、そしたら女官や兵士の皆さんに見つかってしまって、恥ずかしくて結局指輪、作ってもらえなくて。だけどやっぱり何かあげたかったから……あの……」
「……」
「カズマ様?……あっ、も、もしかしてこんなのいらない、ですよね!?ご、ごめんなさい、私こどもみたいなことして……」
「……いや、いる」
「カズマ様、何でそんな笑いをこらえてるんですか!?」
「笑ってなんかいない」
「うそ!やっぱりこどもみたいって呆れてるんですね!?」
「違う」
「ううう〜、カズマ様のばかー!」
「誤解だ」
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