殺し屋一家 | ナノ


▼ こんな毎日です

「だんなさまなんか大っっ嫌いです!」

「奇遇だな、俺もクソガキのことなんか好きじゃねえよ!」

「クソガキって言うな、この殺し屋!」

「んだと!?殺し屋で悪いか!言っとくけどな、うちは全員殺し屋だぞ!」

「言われなくても知ってますよ、この野蛮人!」


ぼくは加賀美ミオ。殺し屋一家・加賀美家の三男だ。よくフルネームで呼びにくいと言われる。ぼくも言いにくい。


半年前から、兄夫婦のこんなやりとりを眺めることが日課になった。


半年前にうちの長男・トキ兄のお嫁さんになったのは、トキ兄が殺し損なった元標的の女の子・千雪。

千雪は、今まで標的を殺し損なったことなんてないトキ兄にとって唯一の汚点みたいなものだし、千雪は殺し屋が大嫌いだ。まあ殺し屋が好きな人なんていないと思うけど、トキ兄には一度殺されかけたわけだし、両親を殺し屋に殺られた過去があるらしい。

だからお互い、顔を合わせれば喧嘩ばかりしている。


そんな二人が何故結婚なんてしたのかはまたゆっくり話すとして、今日はぼくが、トキ兄と千雪の夫婦生活の実態を赤裸々にリポートしたいと思う。

ちなみに千雪はぼくのふたつ年上だけど、ちっちゃくて可愛いから好きだ。ぼくと父さんと母さんには優しいし。




朝。

トキ兄が欠かさないラジオ体操の音がうるさいとか、何度ドアを叩いて起こしても千雪が起きてこないとか、そんなことで二人の喧嘩が始まる。

ちなみに、千雪の部屋はトキ兄の隣。何かあったらいつでも駆けつけられるようにと父さんが壁にドアを取り付けたから、二人の部屋は繋がっている。

(ほんとは同じ部屋にさせる魂胆だったらしいけど、激しく嫌がった千雪に母さんが味方した)

喧嘩はだいたい朝ご飯の時間まで続いている。よく飽きないなと思う。


昼間、トキ兄は仕事に出かけるかトレーニングをしているから、千雪との接触はあまりない。

とある事情からトキ兄は『千雪の身を守る』という使命を帯びている。

しかし、この家は最強の要塞だ。この家にいる限り千雪の安全は保証されているようなもの。


『だったら何で結婚までさせてわざわざ俺に守らせてんだよ!うちで匿うだけで十分だろーが!』

トキ兄は、しょっちゅうそう言って父さんに噛み付いている。

今日の昼もそうだった。

『より確実な手段を取っただけだろう』

父さんは事務仕事をこなしながら答えた。殺し屋といえど商売をしている以上、事務は不可欠だ。いずれは千雪に担当させるつもりらしいけれど、父さんは可愛い文房具を使って事務をするのが趣味だ。


prev / next

back/top




「#年下攻め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -