殺し屋一家 | ナノ


▼ ライバル×2

「トキ!そこの小娘をさっさと捨てて今日こそあたしのものになりなさい!」

「そしてトキ兄に捨てられた千雪はボクがもらうから心配いらないよぉ」


面倒な二人組が肩を組んでリビングに踏み込んできた。

片方はうちの兄なんだけど。


「アホイバラ!敵を家に上げてんじゃねえ!」

「幼なじみなんだからいいじゃないの」

「てめーには言ってねえ」

「すぐそうやって照れるんだから!かわいいわね!」

「黙れ、うざい」

「トキったらまだ思春期真っ只中なんだから!あたしが大人の恋愛教えてあげるわよ」


イバラ兄と肩を組んで侵入してきた、無駄に美人でナイスバディなこの女はビアンカ。うちと敵対する殺し屋集団『カクタス』の腕利きスナイパーだ。


「千雪、そういうことだからさ、捨てられる前にボクに乗り換えちゃおうかぁ?ボクと殺人デートしよ?」

「……イバラさんとは関わりたくありません」

「酷いなぁ〜、いつもトキ兄と喧嘩しかしてないのに、トキ兄の方がいいの?」

「だんなさまがいいわけじゃ…………イバラさんよりマシなだけです」

「殺しの愉しさを千雪がまだ知らないからだよ」

「…………ほんとに気分が悪くなるので出ていってくれませんか?」

「ここ、ボクの家なのに」


千雪は千雪で、イバラ兄に言い寄られている。

ほんとに嫌な相手にはこんな感じだ。トキ兄への態度とは全然違う。トキ兄は鈍感すぎて気づいていないけれど。



「クッソ生意気ね、この小娘。殺していいかしら?」

「私が生意気じゃなくてもいつも殺す気満々じゃないですか、ビアンカさんは」

「あら、ばれた?そうよー、だってあたしの方がずーっと前からトキのこと好きなのにぽっと出のアンタが嫁ヅラしてんだもん、そりゃ殺すでしょ」

「嫁ヅラじゃありません!嫁です!」

「ろくに触らせてもやらないくせに?好きとも言えないくせに?他人に対してだけはいっちょまえにやきもち妬いて、ガキじゃない」

「…………」


千雪は唇を噛んで押し黙った。

せっかく素直になれる口実ができるのに、強情だ。ビアンカの言うことも一理あるよね。でも端から見てたらそこも面白いんだけど。


――と。


prev / next

back/top




「#年下攻め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -